製作秘話最後の香りはThe Theatre
『The Theatre』という名前に興味を持っていただくことがとても多いです。
なぜ香りの名前としては珍しい『The Theatre』という名前を使用したのか。
今ではだいぶ本来の形をとりもどしつつある舞台業界ですが、コロナ禍では思うように観劇が叶わないことが多くありました。
お目当ての舞台のチケットを手に入れて、 その日を心待ちにして指折り数えて、
当日にはおしゃれして、いつもより気合を入れたメイクをして劇場へ向かう。
同じようにその日を楽しみにしていた何人もの観客とともに座席に座り、今か今かと幕が上がるのを待つ。
その時の胸の高鳴りを一瞬で想起できるような香りが作りたい。
こういった想いから作られたのが『The Theatre』です。
劇場の香りといっても劇場に特別な香りがあるわけではなく、調香師さんへどんな香りを作りたいのか口頭で伝えるのにとても苦労しました。
観客の多種多様な香水の香りや、お化粧の香り、紳士の整髪料のさっぱりした香り、演者のおしろいの香り・・・
様々な香りが混ざった雑多な香り、でも決して嫌な香りではない。
こんなことを金熊工場の調香の担当者さんにお伝えした時に、1つ興味深い話を聞きました。
調香の際に不要となった様々な香りを1つの大きな容器に廃棄していくと、どのような香りが入っていても不思議なことにフローラル系の良い香りになるというのです。
このお話は、たくさんの香りが集まっている劇場内の香りが決して不快なものではなく雑多なのになぜか心地の良い香りだなと感じていた経験とリンクしたのをおぼえています。
いくつもの試作品ののちに出来上がった『The Theatre』の香りは複雑で雑多だけれど落ち着くようなとても魅力的な香りです。
普段の生活の中でも何かを心待ちにする時の高揚感を得たい方、是非一度お試しください。